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【スローに歩く、北欧の旅#23】食の祭典、FOODEX 2023で北欧の味を探検。①北欧・バルト編

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧のさまざまな試みを紹介するこの連載。今回は食の祭典、FOODEX JAPANで見つけた北欧のカボニューな食品についてご紹介します。

キーワードはサスティナビリティ

毎年3月に開催される食の展示会FOODEX。コロナ禍により休止が続き、昨年は小規模で開催、そして今年3月に久しぶりの大規模開催となり、世界60カ国から2500を超える企業が出展しました。東京ビッグサイトの広大な会場には海外からのゲストも多く、熱気に包まれていました。

48回目となる今回のテーマは「食のトータルソリューション」。環境や気候に配慮した製品やプラントベース食品も多く並び、会場内のステージやセミナールームではフードロスや次世代の代替食品など持続可能社会をテーマにしたプレゼンテーションやディスカッションが行われていました。

毎回、北欧からも多くの企業が出展しており、日本未上陸の味をひと足早く試食できるのも醍醐味のひとつ。オーガニックやサスティナブルをキーワードにした食品を中心に、会場をまわって気になった北欧&バルト三国の味をご紹介していきますね。

環境を守る、エストニアのはちみつ

どこまでもブースが続く広い会場に到着して、まず最初に向かったのはバルト三国のひとつ、エストニアのブースです。なかでも目をひいたのが、天然はちみつを作るNordmel(ノルトメル)。

エストニアのはちみつは抗酸化物質をはじめ、ビタミンやミネラルなど栄養素を豊富に含むといわれ、古くから民間療法にも使われてきたとのこと。国土の半分を占めるエストニアの森には薬効成分のあるハーブがたくさん茂っているため、風味豊かで健康的なはちみつが採れるのだそうです。ちなみにエストニアではハーブティをよく飲むのですが、甘くしたい時に入れるのがはちみつ。ハーブとはちみつの組み合わせがとってもおいしくて、ヘルシーでもあるんですね。

ちょうどブースにいらしたのが創業者であり養蜂家のピーターさん。こうして創業者や作り手と直接会って話ができるのもFOODEXの面白いところです。幼い頃から森で育ったピーターさんは、もう一人の創業者である幼なじみのティモさんとともに森の恵みを活かしたはちみつ作りを世界に届けるため、ノルトメル社を創業しました。

メシはエストニア語ではちみつのこと。ノルトメル社では天然はちみつのほか、固まりにくいクリームはちみつも製造しています。天然のはちみつは時間が経つと結晶化して固くなりますが、独自の製法でゆっくりと撹拌することで固まりにくくしたのがクリームはちみつ。熱処理などをしていないので栄養素はそのまま残り、子どものおやつとしても人気があるそう。エストニアの料理雑誌でおすすめの食品に選出されたこともある製品なのです。私も試食させてもらったのですが、香り豊かで舌触りなめらか。小分けのスティックタイプはお茶に入れたり、おやつ代わりに舐めるのにも便利ですね。

「ノルトメル社では、巣枠から採蜜するための遠心分離機や、工場内の温度管理など採蜜から充填まで必要な電力はすべてソーラーパネルによる発電でまかなっているんですよ」と同社の日本人スタッフ、余田さんが説明してくれました。エストニアではこの数年でソーラーパネルを導入する企業がぐっと増えたそうです。

「はちみつは世界でもトップ3に入るほど偽装の多い食品で、いま世界的に問題になっています。混ぜものをした偽物の安価なはちみつが多く出回り、本物のはちみつを作る養蜂家が市場から追い出されかねない状況なんです。

わが社の代表やエストニアの養蜂家たちは国を超え、また弁護士やマーケッターなどさまざまな分野の人達と協力して法規制や消費者を啓蒙することで偽装はちみつを追放し、はちみつ市場をクリーンにしようという活動もしているんです。」と余田さん。

蜂が地球からいなくなれば、その4年後に人間も絶滅する、とはアインシュタインの言葉。植物の受粉を担う蜂は地球にとって欠かせない存在ですが、昨今、環境の変化や農薬の影響で蜂の数が減っていることが報じられています。養蜂家が蜜蜂を守り育てることは近隣の植物の受粉を助け、環境や生態系を守ることにもつながっているんですよね。ノルトメル社とエストニアの養蜂家たちの試みを聞いて、消費者として正しい製品を選ばねばと改めて気づかされました。

ここでおいしいはちみつの食べ方をひとつご紹介します。お隣のブースで試食提供されていたのが、冷凍のシーバックソーン。シーバックソーンとは北欧で親しまれる黄色い果実で、一粒の栄養価が非常に高くスーパーフードとして昨今、再注目されているのです。そのまま食べるには酸味やえぐみが強いので、これにノルトメルのはちみつをかけて食べてみたのですが……絶品!この組み合わせはぜひ日本でも展開してほしい!

ノルトメル社の日本語サイトはコチラ
https://www.nordmel.ee/ja/

ヨーロッパ初のカボニューコンブチャを目指して

さて次はバルト三国のもうひとつの国、ラトビアのコンブチャを試飲。コンブチャとはお茶を発酵させた植物性のドリンクで、昆布とは関係ありません。日本ではかつて紅茶キノコとして紹介されていたものです。このコンブチャ、北欧でも人気が高く、カフェやモダンノルディックのレストランなどでもおなじみのドリンクなのです。

もともと健康飲料として注目の高まったコンブチャ。酸味が強くお酢を飲んでいるような不思議な味も多いのですが、昨今はおいしさを追求したコンブチャも増え、5%程度のアルコール度数のあるハード・コンブチャも登場しています。

ダックスフンドのロゴが目を引くルディズ・コンブチャには新鮮なベリーやハーブを使ったフルーティなコンブチャがずらり。ハード・コンブチャもあり、ロゴもパッケージもおしゃれ!食事にもあいそうな味わいで、お酒が飲めないグルメ好きにも受けそうな味です。もともと友人たちと楽しむために作っていたのが、話題となって製品化したそうですが、創業者のイゴールさんが追求しているのはおいしさだけでなく、環境に負担をかけないクリーンな製品を作ること。「ヨーロッパで最初のカーボンニュートラルなコンブチャメーカーになる」のが目標です。

たとえば従来のコンブチャはボトル入りが多いのですが、ルディズのコンブチャはアルミ缶入り。その理由は瓶よりも缶の方がリサイクルにかかるエネルギーが少なくてすむこと、また缶の方が配送も効率よくできるためCO2の排出量を抑えられるから。砂糖を使わず、缶入りにすることで保存期間も長くなり、常温で1年ほど持つそう。保存期間が長くなれば廃棄も減らすことができますよね。

国内にとどまらず今ではヨーロッパ各地で人気の高まるルディズ・コンブチャですが、家族経営でまかなえる規模しか生産するつもりはないとのこと。ロゴマークに描かれているのは家族の一員であるダックスフンドのルディ君。売上の一部は、動物のシェルターや診療所に寄付しているというのも応援したくなります。

日本に進出しているバルトの味

出展している製品の中には既に日本進出しているものも。エストニアの森から採れるおいしいはちみつを試してみたい方には、こちらもおすすめ。風味豊かでクリーンな味わいのアーティサンハニーは、ボトルデザインが可愛いのでギフトにもぴったり。いちごやブルーベリーなど果実パウダー入りもあって、シーバックソーンやリコリス(ハーブを使ったグミキャンディのこと。好き嫌いの分かれる独特の味で、北欧のおみやげとしても人気)、きのこ味など北欧らしい変わり種もあります。

こちらの細長いこの物体は……エストニアのポテトチップス。なんでこんなに長いの?と見た目に驚きましたがおいしくて長いのが意外に食べやすい!1枚で満足感があります。バルスナックのグランドチップスもすでに日本進出し、コンビニのほかオンラインでも買えるそうです。

そしてブースの横に立つこの人は……「ガンバルトー!」でおなじみのエストニア出身、元力士の把瑠都さんです。

さてバルト三国のカボニューな食品、いかがでしたか?ノルトメル社のはちみつやルディズ・コンブチャはぜひ日本に進出してほしいですね。次回、北欧・スカンジナビア編につづきます!

エストニア語で猫はkass(カス)、ラトビア語ではkaķis(カティス)といいます。それでは読んでくださってアイタッ(エストニア語でありがとう)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ)

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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