あえてサステナブルは意識しない。Z世代のデザイナー一法師拓門さんが考える“持続可能なファッション”とは?
デザイン事務所ConcePione(コンセピオン)代表、クリエイティブディレクターを務める、一法師拓門さん。
国内外のファッションブランドでデザイナーとして従事した後独立。 ブランド戦略のディレクターとして、ナラティブの構築からコンセプト設計、ビジュアル制作まで一貫して取り組み、Z世代を代表するクリエーターとして多くの企業からデザイン依頼を受けています。
2022年には、自身のファションブランド「Chaine -Project-」も始動しました。
※本記事は2023年1月に作成したものです。
「あえてサステナブルは意識しない」
そう話す一法師さんに、ファッションにおける環境問題への向き合い方、独自のファッション論についてお話を伺いました。
リサイクル素材=サステナブルではない?
――一法師拓門さん
“サステナブル”というワードを聞くと、リサイクル素材やオーガニック生地をイメージする方が多いと思います。でも本来サステナブルは、日本語に訳すと「持続可能」という意味。
リサイクル素材を使っていても、すぐに使われなくなったら、それはサステナブルとは言えないですよね。例えば、リサイクルレザーよりリアルレザー(本革)の方が長持ちすることも、実際あるんです。
もちろん、リサイクル素材を積極的に使うこと自体は、とても良いことだと思います。ただ、リサイクル素材=サステナブルと捉えるのは、ちょっと違うかなって。
あえてサステナブルを優先しない、その理由
――一法師拓門さん
世の中にある多くのサステナブルファッションが、“サステナブルであること”を第一に、コンセプトを考えていると思うんですよね。
僕はベクトルが逆で、“自分のやりたいこと”が優先。それをサステナブルな要素でどう表現するかを模索し追及しています。
サステナブルファッションって、無機質でミニマルなイメージがありませんか?
“サステナブル”という型に、“ファッション”をはめ込もうとすると、どうしてもクリエイティビティに制限がかかりやすいんです。
僕はもっと、ファッションがもたらす高揚感や、着る楽しさを大事にしたい。サステナブルファッションは、もっと有機的であって良いと思うんですよね。
カラフルでプレイフル!100%サステナブルなファッション
――一法師拓門さん
友人の長谷川ミラさんと一緒にやっているファッションブランド「Jam apparel(ジャム アパレル)」では、まさにそういったサステナブルのイメージを覆すような、カラフルでポップなデザインにトライしています。
僕がサステナブルやエシカルに興味を持つようになったのは、ほとんど彼女の影響なんです。もともとは全く興味がなくて…。でも彼女の環境に対する取り組みをずっと見てきて、次第に感化されていきました。
――一法師拓門さん
ひとくちにサステナブル素材といっても、さまざまな種類があります。最近見つけたのは、“表生地はリサイクル繊維で、裏生地はオーガニック繊維”という生地。
――一法師拓門さん
リサイクル繊維の優れたところは発色の良さ。一方オーガニック繊維には、着心地が柔らかく、静電気が溜まりにくいという特徴があります。このような生地を活用すれば、着心地とデザイン性を両立できますよね。
「やりたい」を先行したからこそ、生まれたクリエイティビティ
――一法師拓門さん
青山学院大学発のファッション系サークル「AOYAMA FASHION ASSOCIATION(AFA)」のプロジェクトでも、「サステナブルより自分たちがやりたいことを先行しよう」と伝えています。
豊島株式会社と共同で行ったエシカルファッションの企画では、「黒色」のエシカルTシャツを発表しました。
――一法師拓門さん
エシカルも白とか生成りのイメージがあるので、サステナブル先行で考えていたら、「黒」を使用する発想は出てこなかったと思うんです。
今後も学生たちと一緒に、サステナブルやエシカルファッションに対する、さまざまなバイアスに向き合っていきたいですね。
――一法師拓門さん
Tシャツの「品質表示タグ」を、あえて外側に目立つように付けたのも、実はサステナビリティを意識したこだわりのひとつです。
「自分が着ているものが、何でできているのか」そういったことに目を向けることが、サステナブルな社会に近づく一歩になる。
自分が選んだものが環境にやさしい素材でできていたら、ちょっと良いことをした気分になるし、それってきっと心にもいいことだと思うんですよね。
サステナブルなモノづくり。キーワードは「ストーリーテリング」と「透明性」
――一法師拓門さん
2021年に立ち上げた自身のブランド「シェーヌ プロジェクト(Chaine-project-)」でも、生地だけでない、オルタナティブなアプローチを探っています。
例えば、このフーディーは「都会につくられた人工的な自然」から着想を得て、「人工的な石畳み」をモチーフにしたデザインにしています。
――一法師拓門さん
こうやってストーリーを知るとワクワクするし、同じものでも思い入れが変わってくると思うんです。
ひとつのプロダクトが生まれるまでのストーリーを、わかりやすく、かつ多面的に伝えることも、愛着を持って長く使ってもらうためのアプローチのひとつ。
今後シェーヌ プロジェクトでは、それをきちんとストーテリングしながら、クリエイティブの透明性を上げる仕掛けをつくっていきます。
持続可能なファッションのために、一人一人ができること
――一法師拓門さん
エシカルファッションって、ちょっと高価なイメージがあってハードルが高いと思うので、どうしてもファストファッションに流れてしまう。僕は生産者の立場として、そこに消費者の責任はないと思っています。
100%サステナブル素材にするのはコスト的に難しくても、1%ならできるかもしれない。そういった取り組みを、生産者側が実現可能な範囲で取り組んでいくことが大切だと考えています。
――一法師拓門さん
なかなか個人でできることがイメージしづらいサステナブルファッションですが、何か特別なファッションアイテムを買うというより、基本は無駄をなくすこと。1着の服を大切にするために、ブランドストーリーや商品タグに目を向ける。等身大で取り組めることから始めてみてはいかがでしょうか。
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一法師さんの手掛けるブランドには、ポップでカラフルなアイテムがあったり、クラシックで遊び心のあるデザインのものがあったり…これがサステナブルファッションなの?と思うものばかり。
「カッコいいな、すてきだな、と思って手に取った服がたまたまサステナブルなものだった」そんなカルチャーを一法師さんは目指しているのかもしれません。
取材を通して、「サステナブルと謳われている商品を買うことだけが、サステナブルな暮らしにつながるわけではない」ということにも気づかされました。「自分だったら何から始められそうか?」自分自身のライフスタイルと向き合い、できることから取り組んでいきたいです。
一法師拓門さん出展のイベント情報!
株式会社三越伊勢丹が提供するメタバースを活用したスマートフ ォン向けアプリ「REVWORLDS(レヴ ワールズ)」内に1/16(月)より1ヶ月間限定でバーチャルショップをオープン。Z世代を代表するクリエーターとして、一法師拓門さんのオリジナルブランド「Chaine -Project-」も出展予定です!
アメリカンラグシーキャットストリート店のリアル空間でも、同時期に POP UP STORE を開催。1/21(土)は出店クリエーターが店頭に立ち、メタバース空間と実店舗を繋ぐスペシャルイベントを開催します。
サステナブルな取り組みをしているZ世代のクリエーターがフィーチャーされたこちらのイベント、ぜひチェックしてみてくださいね!