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SDGsで地球も人も元気に!ホテル業界が抱える環境負荷と向き合うスーパーホテルの挑戦

サステナブルツーリズムとよく耳にしますが、その意味は、地域に根付いた文化と環境の保全を大切にした持続可能な旅のこと。英語にするとなんだか縁遠い気がしてしまいますが、日本に古くからある旅の思想とベースは同じなんです。「その地に泊まり、隠れた名所を楽しみ、地元のものを食べる。その地への感謝を抱き、キレイにして帰る。」そんな旅の楽しみ方。ホテル業界唯一のエコ・ファースト企業として持続可能な社会を実現するべく、環境問題に向き合い、取り組んでいるスーパーホテル。「サステナブルな世界をホテルビジネスから」をモットーにどのような取り組みをされているのでしょうか。スーパーホテル代表取締役社長 山本健策さんにお話しいただきました。
※本記事は2023年9月に作成したものです。


非日常の快適空間を提供してきたホテル業界が抱えている環境負荷とは?

――――山本さん
「ホテル」と「環境負荷」が結びつかないという人は多いと思います。実はホテルに一人のお客さまが宿泊するだけで、約6kg(2022年度)の二酸化炭素が排出され、客室清掃・ベッドリネンの洗濯に使う水は、1回あたり約21ℓ以上にもなります。さらに提供される食事のフードロス、アメニティの無駄など、見渡せばたくさんの問題があります。ホテルという場所は、非日常のラグジュアリーを楽しむところ。豪華なシャンデリアがあって、非日常のおいしい食事をいただけるといった演出・体験を楽しみに行く場所という価値観がこれまで多くの方にあったと思います。しかし、コロナ禍を経て人々の意識の変化とともに、旅に求めることも変わってきたのかもしれません。私たちが住む日本の魅力を見直すというか、「豪華絢爛な旅じゃなくてもいい」「地域に根付いて地域から愛されている場所を見て、地元の美味しい食材を満喫すると同時に環境にも優しくできたらいいよね」という考えが増えたように感じています。

環境問題への意識が高まりつつある今、ホテル業界としてもその考えを見直す段階に来ているのかもしれません。

しかし、我々はメーカーではありませんから、カーボンニュートラルに向けて技術的に何かができるというわけではないのです。できることといえば、お客さまに対する「啓発活動」。ホテルから一歩外に出た後に、ご自身の生活スタイルの中で「環境にいいことをしよう」と思ってもらえるような。例えば、ホテル内で電気の節約やゴミの分別などをお客様に発信して、体験していただくことで、それがお客さまご自身の環境への問題意識とつながっていく。その結果、その行動が習慣化され、さらにはご友人やその方を取り巻く社会に広がっていけばいいなと思っています。

環境活動に秘められたポジティブパワーが、SDGsのはじまり

――――山本さん
2000年、当時の水俣市長から「この町を“公害の町”から“環境の街”に変えていきたい」と、環境活動への協力を呼びかけられたのがきっかけです。当時は特別に環境意識が高かったわけではなく、市長の熱意に背中を押された形でスタートしたのですが、水俣市を訪れるたびに街が劇的に変化していくのを感じたんです。例えば、必要なくなったガラス瓶を敷き詰めてアスファルトとしてリサイクルをする。すると、街ゆく人だけでなく、ゴミの分別に携わっている人の顔もどんどん明るくなっていったんです。それまでは公害の町といった少しネガティブな印象でしたが、そこに住む人も景色も明るくポジティブに変わっていきました。その姿を見て、環境活動はものすごいエネルギーを秘めているということに気がついたんです。
その経験から、この活動を水俣だけにとどめておくのではなく、もっとさまざまな地域に還元できないかと考えて、手始めにISO14001(*1) を株式会社スーパーホテルとして取得し、全国の店舗へ順次広げており、現在の活動へとつながっていきました。
当初、省資源・省エネルギーのホテルづくりはお客さまのニーズに合わないのではないか?満足度を下げることになるんじゃないか?という懸念も多くありました。しかし、時代に先駆けて取り組み積み上げてきたものが、いまとなっては当ホテルの一つの価値になっていると思います。

*1)製品の製造やサービスの提供など、自社の活動による環境への負荷を最小限にするように定めた仕様書。ISO14001を取得した組織や企業は、地球環境へ配慮した組織/企業活動を行っていると国際的に認められることになる。

環境先進企業として、地域環境保全の取り組みを環境大臣と交わした「エコ・ファーストの約束」

我々の活動に時代がマッチしてきたところもあり、新入社員の中にはSDGsへの取り組みに共感して入社を決意してくれる人が増えています。今後、社内外関わらず、我々の大きな強みになっていくのではないかと実感しています。

本社の通路にはスーパーホテルがこれまでどのようなSDGsの取り組みをしてきたのかが わかる素敵なディスプレイが。

無理や我慢は不要。旅本来の楽しみこそが地球にやさしいアクション

――――山本さん
環境に配慮した取り組みの中でも、お客さまからの反応を多くいただく3つの取り組みを紹介させていただきます。ひとつめは、公式ウェブサイトから予約いただいたお客さまを対象に、宿泊時に発生させた二酸化炭素排出量を100%カーボン・オフセットしましょうという「ECO泊」です。日々ゴミの分別をしたり、節電に努めたり、環境に良いことをしていても目に見える形で実感することはなかなかないですから、自分がした環境への取り組みをECO泊を通して見える形でお伝えし、「環境にいいことしたな」という実感を得てもらいたいと考えています。

画像はイメージです(画像提供:スーパーホテル)

ふたつめは、連泊の際に 「清掃不要」をお申し出いただいたお客さまを対象に、約21リットルの節水にご協力いただいたお礼としてオリジナルミネラルウォーターをプレゼントしている「エコひいき」です。真っ白でピシッと整えられたシーツやカバーはホテル滞在の醍醐味といえるのかもしれませんが、実は「他人が使ったベッドじゃないからこのままでいい」「自分の生活スタイルのまま過ごしたいから部屋を整えなくてもいい」というお声も多いんです。客室清掃やベッドリネンの洗濯に使う水や人の稼働を抑えたいと考える我々と、そういった方のニーズがマッチした取り組みなのだと思っています。

画像はイメージです(画像提供:スーパーホテル)

最後はオーガニック野菜や有機食材を使った朝食です。現代は、大量生産・大量消費の右肩上がりの成長をめざす時代ではなく、地域社会のため、地球のためのサービスや仕組みを構築することが求められています。それは食に関することも同じ。地産地消であるとかフードロスであるとか、ホテルとして当たり前とされてきていたサービスを見直す時が来たのではないかと思います。だからこそ、我々としては地球にも体にも優しいサステナブルな食事というものを提案し、あわせて食に対する思いも伝えていきたいと思っています。
 
これらの取り組みはスーパーホテルとして皆さまに提供していますが、地球にやさしいことをしたいと思っているなら、それは決して難しいことではありません。例えば、必要のない電気を消すとか、蛇口の水をこまめに止めるとか、当たり前かもしれませんがまずは身近なところで続けてみることが大切です。その結果「誰かがやってくれる」ではなく、気がついたら「自分がやろう」という気持ちになることが社会や環境の変化につながっていくのではないかと思います。それに加えて「体感」することも重要です。気持ちいい空気と美味しい水に癒される経験や、美しい自然を見て感動する。そういう経験が自分の意識を自然にSDGsに変えていくのだと思います。

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コロナ禍を過ぎ、ご家族・ご友人との旅行やビジネスシーンにおいて、ホテルを利用する機会が徐々に増えてきているのではないでしょうか?
見知らぬ街へ足を運び、その地域の歴史や食を堪能し、地域の活性化につなげる。そういった旅の喜びを充実させるために、「環境にやさしい」アクションにつながるホテルを選択するのもひとつですよね。スーパーホテルには、今回紹介した取り組み以外にも、SDGsの達成に向けてたくさんの取り組みが実施されているので、サステナブルな旅を楽しみたい方は足を運んでみてはいかがでしょうか。


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