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【スローに歩く、北欧の旅#33】世界でもっともサスティナブルな町、ヨーテボリを再訪!

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧のさまざまな試みを紹介するこの連載。前回から、ひさしぶりに訪れた北欧の旅のレポートをお届け中。今回はスウェーデンのサスティナブルな町、ヨーテボリについてご紹介します。


スウェーデンの大阪?

北欧の町のなかでも繰り返し訪れているのが、ヨーテボリ。スウェーデン西側に位置する港町で、首都ストックホルムに次ぐ第二の都市です。第二の都市であること、またオープンで明るい人々が多いことから「スウェーデンの大阪」と例えられることもあるんですよ。

おいしいコーヒーやビールなど個性的な飲食店が生まれる場所であり、クリエイターも多く、世界的に注目される国際映画祭も開催されるヨーテボリの町ですが、じつは世界でもっともサスティナブルな町としても知られているんです。
国際会議などビジネスイベントの開催地や出張先、旅先を評価する「Global Destination Sustainability Index (GDS-Index)」が毎年発表しているランキングで、なんと6年連続でトップに輝いているのがヨーテボリ。(ちなみに2022年の結果では2位がノルウェーのベルゲン、3位がデンマークのコペンハーゲンと北欧勢が上位を占めています)。

この他にも旅行情報を発信するロンリープラネットが選ぶ「もっともサスティナブルな旅先」や、EUが選出する「気候ニュートラルなスマートシティ100」にも選ばれており、サスティナブルな旅に関連するランキングでは常連の町なのです。

人々の足となる新たなツールは

私は2017年から毎年訪れていて、今回3年半ぶりに訪れたのですが、まず目についたのは電動スクーターの普及ぶりです。3社ほどの電動スクーターが町のあちこちに停めてあります。使い方ですが、まず専用アプリで利用登録(名前やクレジットカード情報などを登録)をしたら、アプリのマップ上で近くにあるスクーターを見つけます。バッテリー残量を確認したら(←これ大事です)車体にあるバーコードをスキャンしてロック解除。目的地まで乗ったら、使用終了の登録をするだけ。好きな場所で乗り捨てOKなのです。

初の電動スクーターだったので、まずは発進時のスピード調整やブレーキの使い方などを空き地で練習してからスタート。初乗りをした週末の早朝はちょうど路上も空いていて、デビューにはぴったりでした。乗り慣れてからも混んでいる道は極力避けつつ、最初はおっかなびっくりでしたが、次第に快適に利用できるようになりました。

(胸元につけたアクションカメラで、走行している時に撮影してみました)

町中では同様に、ほぼ乗り捨て自由のシェアサイクルも見ましたが、坂道もあるヨーテボリの町ではスクーターが楽ちんです。以前、アイスランド大使にインタビューした際に首都レイキャビクでも普及しているとお話がありましたが、レイキャビクもゆるやかに坂のある町なのでぴったりの移動手段に思えました。ただしヨーテボリでは観光の中心地となる旧市街は石畳の道路が多く、振動が激しく伝わってくるので慌ててしまいました。またシェアサイクルのようにかごや荷台がないので食事をテイクアウトしたい時や荷物がかさばる時には向きません。身軽に動ける行きだけ乗って、帰りはのんびり歩いて帰るなど、使いわけていました。

ヨーテボリは町中をトラム(路面電車)が走っていて、町並みを眺めながらトラムで移動するのもいいものですが、時間帯や路線によっては非常に混雑するので(満員のトラムが停留所に止まらず目の前を走り去っていってしまったこともありました)、そんな時にも手軽にスクーターで走れるのはとても便利でした。

ホテルもイベントもサステナブルが基本

今回、宿泊したホテルにはデンマーク発のエコホテル認証「グリーンキー」のマークがありました。いまではヨーテボリのホテルのうち90%が環境にやさしい宿泊施設として認証を受けているとのこと。また宿泊したホテルのすぐそばには電力で走るバスのチャージステーションがありました。現在、公共交通の95%が再生エネルギーでまかなわれているそうです。

今回訪れたのは5月の終わりで、翌週には6月6日のスウェーデンのナショナルデー(建国記念日)を控えて町のあちこちでイベントの準備が行われていました。2023年は、スウェーデンがカルマル同盟と呼ばれた北欧諸国による同盟から独立して500周年に当たる記念の年。さらにはヨーテボリの町ができて400周年にあたるお祝いの年でもあり、夏にかけてさまざまなイベントが企画されているのです。

「Göteborg 2023」と題したイベントサイトをのぞくと各記念イベントの概要が紹介されています。そのひとつ「PROTOTYPING GOTHENBURG」では、持続可能な社会を実現するためにヨーテボリが町としてどのような挑戦をしているかにスポットを当てています。プロトタイプは製品やサービスの試作モデルを指す言葉ですが、気候変動対策の試験エリアとなっている運河沿いの地域を中心に、ヨーテボリで現在進行形で進む未来へのアプローチを取り上げています。

ほかにもサステナブルな試みをしている遊園地や、年に一度の巨大蚤の市など、カボニューにつながる試みに町のあちこちで出会えるヨーテボリ。車両侵入禁止で昔ながらの自然が保たれた群島など、サステナブルな旅におすすめのスポットもあります。各エリアやイベントについては、改めて別の記事でご紹介していきますね!

ヨーテボリのスーパーマーケットで見つけた猫さん。スウェーデン語で猫の鳴き声はMjauと綴るのですが、それをブランド名にしているようです。商品サイトを見てみると、どうやらサステナブルで、猫と環境の未来のために作られたキャットフードのようですね。それではミャウ!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ) 

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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