【スローに歩く、北欧の旅#52】シナモンロールもリサイクル!サステナブルな北欧おやつ事情
みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は北欧っ子が大好きなおやつ、シナモンロールについて取り上げます。
北欧っ子のおやつも、より環境配慮型に
昨年、コロナ禍以来ひさしぶりに北欧を旅して思ったのは、環境や気候に配慮した食材の選択肢が以前よりもさらに増えていたこと。オーガニック製品やベジタリアン向けメニュー、地産地消の推奨は以前から根付いていた北欧諸国ですが、プラントベース食品や廃棄食材を利用したメニューなど、環境に負担をかけないための食の試みをあちこちで見かけました。
さて北欧を旅する時に、いつも楽しみにしているのが、本場のシナモンロールを食べること。北欧のシナモンロールや菓子パンは、生地にカルダモン(カレーに入っている香辛料です)が入っていて、ベーカリーやカフェに行くと、あの独特のスパイシーな香りがふわりと漂っていて「ああ、北欧に戻ってきたなあ」と感じるのです。
フィンランドのシナモンロールといえばこれ。ぐるぐる巻きで、真ん中が少しつぶれたような形が特徴で、フィンランド語ではコルヴァプースティ(つぶれた耳という意味)という名前で親しまれています。
そんな北欧を代表するおやつのシナモンロールも、どうやらサステナブルに進化しているようなのです。最近ではベジタリアン向けやヴィーガン向けのシナモンロールもよく見るようになりました。以前からオーガニックを掲げたシナモンロールは見かけたのですが、ベジタリアン向けとは、さてどんなものなのでしょう?
調べてみると、バターの代わりに植物由来のマーガリンやプラントベースのヴィーガンバターを使っているようです。ちなみにマーガリンというと日本ではあまりよくないイメージのある方もいらっしゃるかもしれませんが、北欧ではバターだけでなくマーガリンもおいしいんですよ。
4年ぶりのシナモンロールを食べに来たのは、フィンランドの首都ヘルシンキにあるお気に入りのベーカリー、カニストン・レイポモ(レイポモとはフィンランド語でベーカリーの意味)。町中に数軒支店もあって、ヘルシンキに行くたび寄っているベーカリーなんです。
ショーケースの一番手前に見えるのは、カネリピトコ(シナモンの細長いパンという意味)という愛らしい名前がついたシナモンロールの変型判。生地を編んで細長く仕上げたもので、パーティなどで数人で切り分けていただきます。こちらはビーガンレシピで作られています。
シナモンロールのほか旬のベリーを使った菓子パンや、フィンランド名物のピロシキのようなミートパイ、牛乳粥をライ麦生地で包んだパイなど古き良き味を作り続けるカニストン・レイポモですが、この数年は気候変動対策としてさまざまな試みに取り組んでいます。
例えば店内で使用されている電気は、現在では100%再生可能エネルギーに切り替えられました。穀類や牛乳、バターなどの原材料はすべて国産製品を使用。包装やパッケージに使う素材も国産のみに限り、そのうち99%はリサイクル可能なものを選んでいるとのこと。菓子パンやケーキを入れる箱や袋もデザイン変更によりプラスティックの使用料を減らしています。
売れ残った食品はレスキューサービスやチャリティに寄付、またはバイオガスとして再利用されています。こうした取り組みが評価されて、2022年には企業や団体の環境配慮を測るサステナビリティ・レポートの国際団体から、世界でもっとも優れたレポート(ベーカリー部門)に選ばれました。
シナモンロールをおいしく再利用!
カニストン・レイポモから歩いてすぐの場所にある人気カフェ、カッファ・ロースタリーでもサステナブルな北欧おやつに遭遇しました。訪れたのは8月で、ソフトクリームを出していたので注文したら、オートリーのオーツミルクを使ったソフトクリームだったんです。
オートリーとは「#14 環境にも人にもいい 北欧式ベジフードを食べ歩く」の記事でも紹介しているスウェーデン発のオーツミルク。アメリカやヨーロッパ諸国に浸透している人気のオーツミルクで、北欧のスーパーマーケットへ行くとチョコレートやフルーツ味などさまざまなフレーバーも並ぶオートリー製品ですが、ソフトクリームを食べたのは初めて。これがとってもおいしい!牛乳で作るソフトクリームに負けないおいしさを実現するため、レシピ改良にはかなりの時間をかけたそう。
ソフトクリームにカッファ・ロースタリー自慢のエスプレッソをかけたアフォガートや、ベリーソースをかけたものなど、ソフトクリームのメニューにもいろいろあって目移りしたのですが、中でも目を引いたのが、このプッラ・ソフトクリーム。プッラとはフィンランド語で菓子パン類を指す言葉ですが、シナモンロールを指すこともあります。そう、このソフトクリームにはチョコレートとヘーゼルナッツのソースの上に、シナモンロールのクランブルがトッピングされているんです。
北欧のベーカリーをのぞくと、シナモンロールのラスクを時々見かけます。それだけ日々消費されているというわけですが、カッファ・ロースタリーでは残ったシナモンロールをクランブルにして再利用していたのでした。さすがシナモンロール大国!
今シーズンもソフトクリームの季節がスタートし、今年はカッファ・ロースタリーのエスプレッソを混ぜこんだコーヒーソフトクリームを提供しているとのこと(今年はどうやら、この味だけのようです)。この夏もヘルシンキを訪れる予定なので、ぜひ試してみようと思います。
北欧の町を歩く時には、コーヒーと甘いものでほっとひと息つく時間がかかせません。気になるカフェやベーカリーを見かけてはシナモンロールの食べ比べをしたり、いまどきおやつ事情を観察しているのですが、今後は環境に配慮したカボニューなおやつ探しもしてみたいと思います。
さて2年にわたってご紹介してきた「スローな北欧の旅 猫でテーブルを拭いてみる」。今回が最終回となります。政府主導の先進的な取り組みから、町のカフェやショップでの試み、そして無理しすぎずに楽しみながら持続可能な社会を実現するための考え方など、取材しながら学ばせてもらうことが多く、私自身も「カボニューな選択はどっちだろう?」と考えるようになりました。
世界的に見て環境や気候対策の分野でリードしていると思われる北欧でも試行錯誤をしていること、簡単な道のりではないことは取材を通して痛感しました。それでもアイデアを出してトライし続ける北欧の先輩たちにならって、今後もカボニューな未来のために考えつづけたいと思います。全52回にわたる連載となりましたが、読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました!
それではキートス(フィンランド語でありがとう)&タック(スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド語でありがとう)!!
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