廃棄直前の花「ロスフラワー」に、新たな命を。フラワーサイクリスト・高橋響さん
一輪挿しただけで、パッと部屋が華やかになるーー。花は私たちの気持ちを晴れやかにしてくれたり、相手に感謝の気持ちを伝えてくれたりする、とても身近な存在です。一方、そんな華やかな場面の裏側には、さまざまな理由で廃棄されてしまう「ロスフラワー」と呼ばれる花々の存在が。
今回お話を伺ったのは、まだ美しいのに捨てられてしまうロスフラワーに新たな生命を宿すフラワーサイクリストの髙橋響さん。フラワーサイクリストの活動やその裏にある環境問題への想いとは…?
廃棄直前の花に新しい生命を宿す「フラワーサイクリスト」とは?
ーーまず、フラワーサイクリストについて教えてください。
「フラワー」と「アップサイクル※」を掛け合わせた造語です。私たちは、まだきれいなのに何らかの理由で廃棄されてしまうロスフラワーをドライにして、装飾やブーケ、アクセサリーなどの作品づくりをおこなっています。
ーー髙橋さんがフラワーサイクリストになったきっかけを教えてください。
「花のロスを減らし、花のある生活を文化にする」というテーマを掲げた会社『RIN』と出会い、そこが運営するフラワーサイクリスト養成講座に通い始めたのがきっかけでした。講座受講者は、海外を拠点にされている方や、普段は会社員の方、子育てをしながら週末だけ参加される方など。フラワーサイクリストとしての活動の仕方は人それぞれです。
その中でも、ロスフラワーの認知を広めるために、より積極的な活動をおこなうメンバーを「フラワーサイクリストのアンバサダー」と呼んでいます。アンバサダー限定のFacebookコミュニティでは、月に一度オンラインミーティングで情報交換をしたり、ワークショップを開催したり。メンバーは皆、共通の想いを持った頼もしい仲間たちです。
華やかなイベントの裏で、捨てられてしまう花たち
ーー『RIN』のHPを見て、ロスフラワーはお花屋さんだけでなく、生産や流通などあらゆる場面で発生していることに驚きました...!
ロスフラワーと聞いて、お花屋さんでの売れ残りをイメージされる方が多いと思います。しかし、それだけではありません。市場に卸す際、規格に合わない、たとえば茎の長さが長すぎたり、短すぎたり、クネクネと曲がっているという理由で跳ねられている花たち。
そこをクリアしても、今度は市場で売れ残る。お花屋さんに並ぶまでの間にも、ロスフラワーは発生しています。
ほかにも、結婚式やイベント、撮影など、その日限りで捨てられてしまう花はたくさんあります。
ーー髙橋さんが活動する中で、特にロスフラワーの多さを身をもって感じたのはどんな時ですか?
気温が暖かかったために、早く咲きすぎた母の日用のカーネーションが、大量に東京の市場でロスになっていた時です。
ーーお店に並ぶこともなく廃棄されてしまうのは、とても悲しいですね...。
花は生き物なので、私たちのイベントに合わせて咲いてくれるわけではありません。咲くスピードは、その花本来が持つ特性そのもの。それを人の都合に合わせることでロスが出るのは、とても不本意だなと思いました...。
仲間で声を掛け合って、何百本ものロスフラワーを救出
ーーフラワーサイクリストたちは、ロスフラワーの情報をどんなふうに入手されているのですか?
そのフラワーサイクリストの強みや繋がりによって変わってきます。たとえば、農家さんとの繋がりが強いメンバーは、農家さんから直接「これくらいのロスが出たよ」と連絡をいただいて、受け取りに行きます。
ただ、その人だけでは回収しきれない場合もあるので、先程のFacebookコミュニティで声をかけ、みんなで受け取りに行く。フラワーサイクリスト同士で柔軟に情報共有をしています。
ーー窮地に駆けつけてくれるピンチヒッターのような存在ですね!
結構な量をヘルプできるんですよ!昔、アルストロメリアっていう花がビニールハウスひとつ分のロスが出て、緊急ヘルプがかかりました。多くのフラワーサイクリストが手を挙げてくれて、何百本、何千本という花も、みんなで分け合えばあっという間に捌けてしまう。フラワーサイクリストの活動は一人だけではできないもので、仲間同士の繋がりの重要性が身に染みました。
小さな行動の積み重ねが未来を変える
ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。
今日たまたま出会った一輪の花が「2年後の未来を変えるかもしれない」といったメッセージを込めて、日々フラワーサイクリストとして活動しています。
フラワーサイクリストになる前の2年間は、私にとってとても苦しい時期でした。キャリア迷子の中で『RIN』に出会い、フラワーサイクリストに出会い、そこでやってみようと思えたから、今の私があります。そういった小さな点によって、2年後の今が大きく変わっている。今の積み重ねによって未来は変えられるのだと思っています。
ーー環境問題に関しても、通じるところがあるかもしれないですね。
そうですね。だから、あまり難しく考えすぎず、楽しそうだなって思えることに気楽にチャレンジしてみようよって、一人ひとりに声をかけるような気持ちで今後も活動していきたいです。
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後編では、高橋さん直伝「捨てる前にできる花の活用方法」として、生花をきれいなドライフラワーにするコツや、手軽にできるポプリのつくり方を紹介します!お楽しみに!
写真提供=髙橋響
取材・執筆=佐藤伶