肉じゃがが教えてくれた、水に関するビックリした話
「環境問題」と聞くと、スケールが大きすぎて、なかなか自分の生活と結びつけるのは難しいなと思いませんか?
気候変動、砂漠化、海洋汚染、土壌汚染 etc.…昨今、さまざまな問題を見聞きすることが増えました。けれど、「それって自分の生活と本当に関係あるの?」「一体自分は何をしたらいいの?」と、頭を悩ませてしまう人も少なくないはず。
そこで提案したいのが、大きな問題はいったん脇において、身近な食卓を見つめてみるということ。
今回は、水に関するビックリした話を皆さんにもシェアさせてください。
「自分にも地球にもいい暮らし」を目指して
私は、“食卓からWell-beingを” をテーマに掲げるコミュニティ・生活共同体『TSUMUGI』で活動しています。具体的には、農家さんと協働して農業にチャレンジしたり、生ごみを堆肥化したり、食卓における循環を自ら体験する活動を通して、「自分にも地球にもいい暮らし」を探求しています。
暮らしにまつわるさまざまな勉強会も行なっています。今回ご紹介するのは、水ジャーナリスト・橋本淳司さんをその勉強会にお招きした際に聞いたお話です。
バーチャルウォーターって、聞いたことありますか?
突然ですが、今日の晩御飯に肉じゃがを食べることを想像してみてください。
肉じゃがをつくるのに必要な水の量はどれくらいでしょうか?
煮汁に必要な水が200mlくらいかな?
…と思いきや、例えば2人前の肉じゃがをつくるには、煮汁に加えて約4,455Lの水が必要なんです。
いやいや、肉じゃがにそんなに大量の水が入っているわけない!と思われるかもしれませんが、牛肉・にんじん・たまねぎ・じゃがいも・こんにゃく...これらを育てるために約4,455Lの水が必要なのです。約4,455Lとは、なんと家庭用のバスタブ22杯分です...!
特に、水を必要とするのが牛。牛の飲み水だけでなく、牛が食べる大量の穀物にも水が必要なため、200gの牛肉を得るためには、約4,120Lの水が間接的に必要だそうです。(※1)
このように、目には見えないけれど、食べ物に形を変えて間接的に輸入している水を「バーチャルウォーター」と呼びます。2005年の試算では、日本は国内で使用される年間水使用量と同程度のバーチャルウォーターを輸入していると言われています。(※2)
海外では水不足が深刻になっている地域もあるため、輸出する作物をつくるために水を利用し、その結果、その地域の人たちが十分に水を使えていないということも考えられます。
食卓から考えると、自分のできることも見えてくる
今回は、水にフォーカスして考えてみましたが、自分が食べているものの背景を知ろうとすると、生産過程でCO2がどれだけ排出されているのか、土壌汚染はなかったのか、労働環境に問題はなかったのか etc.…たくさんの問題に突き当たります。
でも、自分の食生活が課題に繋がっているということは、裏を返せば自分にもできることがあるということ。
外国産ではなく、なるべく国産のもの、地元で採れたものを食べると輸送にかかるCO2やバーチャルウォーターも減らせます。また、家庭での食べ残しを減らすことや、ペットボトルの水を買わずに、水道水を工夫して飲むことも、今日からできる簡単でエシカルな選択肢だと思います。
私は、水道水は湯冷しにしたり、ちょっとテンションの上がる水差しにハーブと備長炭を入れてハーブウォーターにしたり、少し奮発して購入した炭酸水メーカーを使って自家製炭酸水にしたりして飲んでいます。
「今日、何食べよう?」と考える時に、食べ物の背景にも思いを巡らせてみると、昨日よりちょっと地球に優しい暮らしに近づけるかもしれません。