冷凍して旬を閉じ込める!?買ってもよし!作ってもよし!地球にいいアイスを紹介
夏になると、ついつい食べたくなるアイス。
実はアイスっておいしいだけじゃなく、フードロス削減の観点からもすばらしい加工方法なんです。だって、廃棄される食品をアイスに加工することで、消費期限が長くなるんですから!
そんな取り組みを、産地への貢献、食材廃棄削減などサステナブルな目線で実践しているアイス屋さんをご紹介します。また、余らせてしまいがちな食材を使った、自宅でも簡単に取り入れられる“アイスの心得”も伺いました!
おいしいアイスにすることが、地球にやさしいアクションに。サステナブルなアイス屋さん3つ
店頭で売れ残った野菜や果物を使ったアイスが160種!横浜『KIKI NATURAL ICECREAM』
産地巡りやイベント出展、開催など、旅をする機会が多いため"旅する八百屋"をキャッチフレーズに掲げる『青果ミコト屋』は、環境にやさしい持続可能な農法、自然栽培で作られた青果を中心に扱う八百屋さん。10年という活動期間を経て、昨年、横浜市青葉区に『Micotoya House』をオープンしました!
そこでは、野菜だけではなく『KIKI NATURAL ICECREAM』としてアイスの販売も。
「これまで『青果ミコト屋』は、オンラインストアや定期宅配、イベントにて青果販売を行っており、事前に必要な量がわかる、受注販売に近い状態でロス食材がありませんでした。ただ、実店舗を持つにあたり、売り残しが避けられないという懸念が。そこで、売れ残ったものや輸送中の傷みで販売できないような青果をアイスにすることで、食べ物をムダにすることなく、店中で循環させたいと考えたのがはじまりです」
現在、約160種(!)ものフレイバーがあり、時期により変わります。なかでも、ロス食材をなくすため、売れ残った野菜や加工品の副産物に面白いエッセンスを加えたものが人気とか。たとえば発酵紫キャベツにいちごとローストしたビーツを合わせたアイス、じっくり焼いた生にんにくで作ったクッキーをザクザク混ぜ込んだアイスなど!
「農家さんから自然の恵をいっぱい受けた新鮮な果物や野菜が届くので、その味をダイレクトに感じられるよう、常に使う素材の味わいを味覚構成の中心におき、フレイバーを考案しています」
野菜のほかにも、日本酒の酒粕、ワインの搾りかすなどの副産物や、マシンの構造上出てしまうロスになるエスプレッソ、糖度が低く発酵してしまう蜂蜜、シロップを作る際に濾(こ)したあとの果物、サンドイッチを作る際に切り落とすパンの耳など、食べられるけれど生かしきれないという食材を積極的に貰い受け、材料にしているそう。
「農家さんが、地球のため、家族のため、食べる人のために安全でおいしいものを届けたいと願って、手のかかる農法で作物と向き合い、それに甘んじることなくおいしい青果を届けてくださることに日々感謝しています。廃棄した場合、野菜だけでなく作り手の想いまで捨てることになると考えています。おいしさや食べ方だけでなく、農家さんの人柄、暮らしも含めて消費者に伝えることで、食べずに捨ててしまうなどムダにすることなく、おいしく大切に食べてもらえたらと思いますね」
溢れる自然のエネルギーを、余すことなくアイスに閉じ込める!蔵前・本所&渋谷『Marked』
蔵前・本所と渋谷に店舗をかまえる『Marked』は、店頭でパンや野菜、調味料など、全国津々浦々の豊かな食に関連するものを扱っています。大切にしているのは、「つくる・つなぐ・まわす」という3つの柱。そのうちの「まわす」は、持続可能な社会に貢献するというものです。
かねてより『Marked』には、「割れた桃が大量に出てしまった」という桃農家さんや、「中のチョコレートが溶けてしまったウエハースがある」という輸入食品店からの相談が届いていました。
これらの食材は、アイスにするにはうってつけ!
「地球を痩せさせない農法で野菜や果物を育てていたら、実が木から落ちたり、割れたりするのは自然なこと。私たちはそんなふうに、溢れ出す自然のエネルギーを余すところなくアイスに閉じ込め、食品ロスを削減しています。多くのスーパーでは、本当に大量の野菜・果物が連日廃棄になっているのですが、私たちは産地に赴き、生産者の努力を間近で見ているので、とても破棄するなんてできません。ウエハースなどの加工食品も同じです。生産者さんを買い支えることも、『Marked』にできること。アイスに加工すれば賞味期限もぐんと長くなりますし、フードロス削減の観点から見てとても優れた解決策なんです」
そんな想いをのせて作られる『Marked』のフレイバーは、「Classic」「EARTH」「WOW!」といったユニークなキーワードで追求されています。 定番のフレーバーを『Marked』らしく提案する「Classic」は、たとえばチョコミントならば、香料・着色料を使わず白いアイスに。旬の食材を使った「EARTH」は、大地の味をそのまま楽しめるアイス。一番反響が大きかったのは、昨年出た「枝豆塩オリーブ」。オリーブオイルと塩が枝豆の持つ甘みとコクを引き出し、子どもから大人まで大人気だったそう!最後は、意外な組み合わせを楽しめる「WOW!」。後味が甘酒のようなチョコレートに思い切って甘酒を合わせたり、海藻の旨味をたっぷり含んだ藻塩をキャラメルに仕立てたり。
「私たちは“健全な食と会話で明るく思いやりのある社会をつくる”というミッションを掲げています。たとえば『おいしい!』と思ったら、どんな人が作ったのか気になりませんか?そんなふうに、いかに生産者さんの想いをお客様に伝え、お客様が生産者さんに目を向けるか。生産者さんとお客様をつなぐだけでなく、ゆくゆくは『Marked』というハブを通じて生産者さん同士がつながり、食のこれからを考えていく…そんな未来を思い描いています」
みんな大好き!ドーナッツとアイスでフードロスに貢献『RACINE DONUTS&ICE CREAM』
青山の、緑あふれる一角に佇む『RACINE DONUTS&ICE CREAM(ラシーヌ ドーナッツ&アイスクリーム)』。ここは池袋にある「RACINES Bread&Salad」の姉妹店で、ドーナツとアイスクリームをメインに扱うテイクアウト専門のショップとして、同社が運営するレストラン「RACINES AOYAMA」に併設するかたちでオープンしました。
販売されているドーナッツやアイスにはふんだんに果物が使われていますが、そのほとんどが規格外品。社内には“Except for A”、直訳すると「Aを除く」というプロジェクトがあり、あえてA品ではなく、B品やC品といった規格外の食材を積極的に買い付け、ていねいに加工していこうという取り組みです。
「生産者さんが手間暇をかけて作ったものだから、最大限に敬意を払い、とにかくムダなく使いたい。おいしさとともに、生産者さんの想いや素晴らしさをお客様へ伝えていきたいです。店頭では生産地や生産者さんについてご説明することもありますので、作り手の方々の顔を想像しながらお召し上がりいただける機会になれば嬉しいです!」
たとえ規格外品でも、規格品と同じように手をかけて育てられたものということは変わりありません。こだわりは、生産者から仕入れたその時々の旬の食材を最大限に活かすこと。
「アイスクリームは、規格外の食材を生産者から買い取り、自社で丁寧に加工して作っています。季節ごとにフレーバーを入れ替えるのではなく、販売分の在庫が完売してから新しいフレーバーを投入し、廃棄することなく販売しています。売れ行き次第でフレーバーが変わるので、人気を定義することが難しいんです。でも、お客様はその時々の味を楽しみに来店してくださいます」
【おうちで実践!】
野菜や果物が余った時にできる“アイスの心得”
旬の野菜や果物って、大きくてとっても立派。「ぜんぶ食べるぞ!」と意気込んで買っても、タイミングを逃し、つい鮮度が落ちてしまうこともありますよね。
上でご紹介した3店に、おうちではじめる“アイスの心得”を伺いました!
「『材料をすべて揃えてから作ろう!』ではなく、「これを入れてみたい」「あれ入れたらどうなるかな」というまっさらな気持ちで楽しんでみてください。そんな思いつきが、焼き菓子と違ってダイレクトに味に出てくるのもアイスの面白さだと思います。甘いだけではなく、野菜のジェラートにスパイスをあわせたり、組み合わせは無限大です」(Marked)
ーーーーーー
「果物や野菜が余った時は、加糖してジャムやソースにして、市販のアイスにかけて食べるのが手軽でいいと思います。加糖する目安は、食材の量に対して40%くらい。砂糖を加え、火にかけるとジャムやコンフィチュールが簡単に作れます。
<おすすめの組み合わせ例>
・りんご
焼いてからジャムにしてシナモンを加えてバニラアイスにトッピング。
・いちご
ジャムにする時に練乳を少し添え、かき氷にトッピング。
・バナナ
ジャムにしてアイスにかけ、さらにチョコレートを砕いてトッピング。
組み合わせを活かすと、普段食べているものとは一味違う新鮮なおいしさに出合えるかもしれません!」(RACINE DONUTS&ICE CREAM)
ーーーーーー
「ソースやジャムなどに加工してミルクアイスに混ぜ込んだり、直感のままに楽しんでみるのがおすすめです!特に、旬のもの同士、同じ産地のもの同士は、相性がいいんですよ。そうやって、季節や産地にまで想いを馳せると、もっとおいしくなるのでトライしてみてくださいね」(KIKI NATURAL ICECREAM)
* * *
おいしく楽しいという感覚が、地球のためになる。これから暑くなる季節、ぜひアイスを通して地球にやさしいこと、はじめてみませんか?