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かぐや姫が微笑えむような竹林に!地元の学生が放置竹林で整備のお手伝い

三重県桑名市で放置竹林が市の重点課題になっているという話を聞き、足を運びました。前編では、放置竹林がどのように誕生し、放置することによる災害などについて伊藤なるたか市長をはじめ、竹林整備に関わっている桑名市農林水産課、桑名竹取物語事業化協議会の皆さまにお話を伺いました。
 
後編では、実際に竹の伐採のお手伝いをした模様をレポート。NPO法人桑竹会・酒井さんに伺ったお話なども併せて紹介していきます。


予想はしていたけど、これが放置され荒廃した竹林!?

右側はまだ整備前の竹林

今回は、三重県桑名市志知にある放置竹林の現場にお邪魔しました。道を挟んで左半分が整備後の竹林。右半分は整備前の荒廃した竹林という場所。天気がいい日にも関わらず、整備されていない竹林は、木々が倒れ込み、隙間から空を見上げることもできず鬱蒼とした暗い雰囲気…。
 
早速、山林を歩きながらお話を伺いましょう。

――桑竹会・酒井さん
この辺りは元々、雑木林だったところに竹が侵食してきたような土地です。左手のすでに整備された土地に生えている竹は孟宗竹(もうそうだけ)で、右手の整備前の土地に生えているのは真竹(まだけ)と淡竹(はちく)。こちら側の竹林は、整備しても切った竹の活用方法がまだないので、手付かずの状態になっています。

NPO法人桑竹会の酒井さん

<豆知識>
日本では真竹が主流でしたが、150年ほど前に中国から孟宗竹が入ってきたそう。現在ではタケの種類は20種類もあり、その中で食べられるのはこの3種類とのこと。
 
(特徴)
孟宗竹:成長が早く、美味しい
真竹:色が濃く、節は二重で、節と節の間が長い
淡竹:真竹よりも細く、色が薄く、節は二重で、節と節の間が短い

これが孟宗竹


きれいごとじゃムリ!「地域への想いと喜び」が不可欠

大雨によって放置された山林が土砂崩れしたときの写真

――桑竹会・酒井さん
NPO法人桑竹会は今年で14年目になります。主な活動は委託を受けた竹林の整備ですが、竹あかりを作ることもあれば、竹炭などを作って販売することもあります。

ボランティアとして一緒に竹林整備に携わりたいと言ってくれる人はいますが、2回、3回とは続かないケースがほとんど。本当に地味な作業なんです…。だからこそ、地域への想いや、現場の作業に携わる喜びを少しでも感じられないと難しいのかもしれませんね。


昔の里山の姿を語り継ぐために

――桑竹会・酒井さん
NPO法人桑竹会の主な活動は週2回の竹林整備です。その活動とは別に高校生(桑名工業高校)に竹林や里山のことを学校と連携して授業で教えています。

私たちの若いころの里山は歩きやすく、昆虫もたくさんいました。しかし、今となっては山から薪などの燃料を拾う必要もなくなり、タケノコやきのこ採りもしなくなりました。里山本来の魅力や素晴らしさを伝えていこうと思い、3時限の授業を年に25回やるようになって、今年で3年目。このボールペン※が生まれたのも、生徒たちに竹や桑名市の魅力を感じてもらえたからだと思います。
(※)中学生と桑名工業高校、そして桑名竹取物語事業化協議会(NPO法人桑竹会)が桑名産竹を使ったボールペンを製造

竹ボールペンの贈呈式 左:提案者であり地元中学生の野嵜さん 右:伊藤なるたか市長


1日に200本竹を切れたとしても、その先に「人」がいない!?

――桑竹会・酒井さん
1日中竹藪に入ってチェーンソーで切れる本数は、一人で200本程度。しかし、切った竹はそのままにしておくことはできないので、処理を施します。集成材を作るためのカットをしたり、粉砕機で粉砕をしたり…。一人こなせる本数は、50〜100本くらいといったところでしょうか。

もし、桑名中の放置竹林を一気に整備しようと思ったらどのくらいの人手がいると思いますか?

3年〜4年周期で全部片付けようと思うと、今の桑竹会が8つくらいないと手は回らないくらい。とはいえ、少しずつメンバーを入れながら拡大しているので、近いうちに規模が倍くらいになってくれたら、と思っています。


いざ!はじめての竹林整備へ

参加者は、NPO法人桑竹会の皆さんに加え、桑名竹取物語事業化協議会の蛭川さん、桑名市農林水産課の稲田さん、三重大学の学生3名、四日市大学の学生4名、そしてカボニュースタジオの3名!

説明を聞いているときの真剣な表情

安全面を考慮して今回はノコギリで竹を切ることに。
動きやすい格好に加えて、ヘルメットを着用し、軍手も装着!
 
そびえ立つ竹を前に、桑竹会の酒井さんから使い方を教えていただき、いざ実践のとき。

両手で輪っかを作った時よりも太い竹をギコギコとノコギリで切っていきます。この時、力みすぎてしまうとノコギリは動かず、反対に強く押しすぎてしまうと折れてしまうことがあるそう。

元気いっぱいの男子学生チームは1分もかからず竹を伐採していましたが、女子チームはそう簡単ではありません…。ノコギリの引き方のコツを掴むまでに数分かかり、腕力も弱く一呼吸で切り落とすことはできないため、何度も息を整え、姿勢を起こしては切り続けていました。
(がんばれ!!みんな!!)
 
根元から切った竹は非常に重く、トラックに運ぶことができないため、積み込みやすいよう決められた寸法に小さくカットしたり、粉砕機で粉々にしたりします。

切った竹を細かく粉砕する風景(参考:桑名工業高校と桑竹会の連携事業での一場面)

バリバリバリバリバリバリ!
竹を砕く音は耳に刺さるくらい大きく、音とその振動に終始ビクビクしていました!

この小さくカットした竹ですら、持ち運ぶ時にフラついてしまうような重さ。一本ずつ丁寧にトラックの荷台に積んでいきます。切り立ての竹には水分が多く含まれているので、販売されている製品のようなカラッとした軽さはなく、両腕にズーンとのしかかってきました。
(積極的に運んでくれた、男子学生のみなさん!ありがとう!!)
 
安全講習、ノコギリでの伐採、粉砕、そして最後のトラックへの積み込みまでの一通りの流れを体験させていただき、約90分。駆け回ったりアクセク動いたりしたわけではないのに、斜面に立って作業しているだけで足はパンパンに!真冬だというのに、体もポッカポカに温まっていました!
(冬じゃない時期に体験していたら、汗が止まらないのでは!?)
 

参加した学生さんの顔からは、満足感と疲労感が滲み出ているようでした。
 
今回は、ゆっくり説明しながら作業を指示してくださいましたが、普段この作業を1日、6時間くらいぶっ通しでやっていると聞いて、体力面含めて継続することの難しさ痛感しました。


竹林整備の現場を通して

参加してくれた学生のみんなに一言ずつコメントをいただきました!
 
<四日市大学から参加した学生さん>
研究室の先生からぜひやってみたら、と紹介されたことがきっかけだそう。

左上:岡田さん/右上:大井さん/左下:宮城さん/右下:荒木さん

ーー岡田さん
四日市大学の近くにも竹林があり親近感があったので、参加しました。重機だけを使って簡単にできるものではなく、整備するにはこれだけ人手が必要ということを知れた。
 
ーー大井さん
日頃、竹の肥料を使った研究をしていて、破砕したチップなどをまいているが、その手前の部分を実際に体験することができてよかった。
 
ーー宮城さん
実際に参加して楽しいと思った!こういう取り組みがもっと広がり、きれいな竹林が戻ってこれば景観もよくなり、外からも人を呼べるようになるのではないかと思った。
 
ーー荒木さん
参加できてよかった。地元や大学の近くなど、自分の身近なところでまたこのような活動があったら参加したい。
 
 
<三重大学から参加した学生さん>
普段から竹を使った家具の研究や、その他の有効利用方法などを研究していることもあって参加を決意した、ラグビー部の先輩&後輩。

左:斎藤さん/中央:桑山さん/右:竹内さん

ーー斎藤さん
実際に竹林を整備したことはなかったけど、道路に飛び出している竹をみることもあって、放置竹林の存在は知っていた。今回、その現場を知ることができてよかった。
 
ーー桑山さん
斎藤先輩から声をかけてもらい、面白そうだと思って参加した。実際にやってみて楽しかったし、普段ではできないような貴重な経験をさせてもらった。
 
ーー竹内さん
同じく、斎藤先輩から声をかけてもらい、面白そうだと思って参加した。初めて触ったけど、ノコギリで切るのが思った以上に大変だった。
 
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放置竹林のことだけでなく、普段から環境への意識を持つようにして生活していると話してくれた学生さんたち。マイボトルやマイバッグは周りの友達も当たり前のように持っているし、もう特別なことじゃなくなっていますよね、と笑顔で語ってくれたのが印象的でした。

参加してくれて、本当にありがとうございました!
おつかれさまでした!


竹の活用法を見出せたとしても、放置竹林を整備できなければ原料となる「竹」は手に入りません。しかし、現状、人手が足りないのです。

だからこそ、「桑名市の放置竹林をなんとかしたい」、「機会があれば取り組みに参加してみたい」と考えている企業、団体、個人の皆さまににこの現状を届け、少しでも取り組みの応援になればと思っています。

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私たちの街にきてほしい!そんな自治体の皆さま、ぜひ声をかけてくださいね!


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