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【スローに歩く、北欧の旅#39】ブラックよりグリーンに!ファッションで人と環境をつなげるスウェーデンのお店の話

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回はサステナブルな暮らしのために、服や製品とともにメッセージを送るスウェーデンのお店をご紹介します。


ブラックではなくグリーンなフライデーを

日本でもすっかり定着した、ブラックフライデー。クリスマス前の一大商戦として大規模なセールが行われますが、最近ではブラックフライデーではなく「グリーンフライデー」を掲げる店も増えています。

グリーンフライデーとは、もともとフランスのリサイクル企業が掲げた言葉。ブラックフライデーによる過剰消費をやめて、リサイクルをしたり、エシカルを掲げるブランドを支持するなど、環境を破壊する消費行動から、環境と向き合う行動へのシフトを呼びかけています。

この意見に賛同する企業は次第に増え、日本ではメルカリが2020年からグリーンフライデーに取り組み、今年は古着やユーズドアイテムを使ったファッションショーを企画しています。北欧ブランドとしては、イケアもグリーンフライデーを掲げて、リサイクル素材を使った製品や省エネ商品を用いたコーディネートを提示するなどサステナブルな暮らし方を提案してきました。イケアでは2017年から家具の買取もスタートさせ、買取した家具をアウトレット価格で販売するなど循環型ビジネスにも取り組んでいます。

服とともにメッセージを纏う

私がグリーンフライデーについて知ったのは、スウェーデンの町マルメにあるセレクトショップ「LIEBLING(リーブリング)」がきっかけでした。インスタグラムで「私たちはブラックフライデーはしません。値引きなし、フルプライスでお待ちしてます!」とユーモアあふれる呼びかけをしていたのが目を引きました。

マルメの町中にあるリーブリングには、北欧らしい色や柄のワンピース、コートなどオリジナル製品のほかに、服から生活雑貨に至るサステナブルなブランドの製品がセレクトされ並んでいます。デンマーク製のニットやリトアニア製のリネンなど北欧のブランドも多く、店頭に並ぶ製品はどれも長く使えるタイムレスなデザインばかり。私はこの店をきっかけに北欧をはじめ、ヨーロッパのサステナブルなブランドについて知るようになりました。またインスタグラムでフォローするようになって、お店の考え方を理解できるようになりました。

オリジナルの服はオーガニックビスコースやテンセルなど環境に配慮した素材を中心に作られ、限られたラインナップを少量生産するのがリーブリングのスタイル。少ない服で着回す「カプセルワードローブ」や、「地元で、小さな店で買い物を」といった呼びかけをずいぶん前からしていたリーブリングですが、インスタグラムの投稿に記されたハッシュタグを辿っていくと、スウェーデンのエシカルファッション事情を知ることもできます。

たとえば#hållbartmodeはスウェーデン語でサステナブルファッション、#långsamtmodeはスローファッションの意味。こうしたハッシュタグから、さまざまな年齢層の人たちが古着やサステナブルなブランドでおしゃれを楽しんでいる様子がのぞけますし、#småskaligt(スモールスケールの意味)からは大量生産や大量消費とは異なるビジネスのあり方や消費行動に関する投稿も見られます。

リーブリングでは、季節に合わせて寄付や支援の呼びかけもしています。たとえばイースターの時期には、コートの売上の一部をユニセフに寄付。またクリスマス前には、DV被害にあった女性や子どもを支援する非営利団体のために、寄付できる衣服を募っています。

リーブリングが支援団体に寄付する服を募っていた時に、ちょうど見ていたアメリカのドラマ『メイドの手帖』では、DV被害に遭い、着のみ着のままで逃れてきた女性たちが、服を選ぶことで自分自身を取り戻す一歩を踏み出すシーンが描かれていました。シェルター内の一室には、ブティックのようにさまざまなデザインの服が取り揃えられていて、利用者は自由に選んで無料で服をもらえる仕組みになっています。なるほど、こういう支援の形もあるのだなと気づくきっかけをもらいました。

リーブリングのCEOでありデザイナーのリーさん(写真中央)はヒューマンエコロジー(人間と環境との共生をめざす人間環境学または人間生態学のこと)を学び、他のスタッフとも知識を共有しながら持続可能でグリーンなビジネスを目指しています。さらには顧客も巻き込みながら、ファッションは消費するだけのものではなく、そこから学び、つながり連帯することもできるのだとメッセージを発信しています。

今年はひさしぶりの旅でリーブリングを訪ねることができたのですが、ショップ奥のスペースにはセカンドハンド(中古品)コーナーができていました。ここでは顧客から着なくなったリーブリングの服を買取り、アウトレット価格で販売しています。状態がよく、店内のラインナップにも合うデザインを厳選して買取っているとのこと。ああ近くだったら、ちょくちょくのぞきに訪れたいものです!

服の過剰な生産や大量廃棄が大きな問題として注目されるようになり、新しい服はもう買わずに古着でおしゃれを楽しもうと呼びかける層も増えているスウェーデン。リーブリングのように、新品を売るお店でもこうして古着を扱うケースを見かけるようになりました。

環境のことを後回しにせずにおしゃれを楽しもう、と呼びかけつづけるリーブリング。フレンドリーでチャーミングなスタッフたちそれぞれの着こなしも素敵で参考になるので、ぜひインスタグラムやHPをチェックしてみてくださいね!

LIEBLING HP:https://lieblingliebling.com/

Instagram:https://www.instagram.com/lieblingliebling/

リーブリングからの帰り道、マルメの街角で猫さんを発見。それではヘイヘイ!(またね!)

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ) 

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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