楽しい旅が誰かを傷つけている…?今こそ考えたい旅のカタチ
今回は、サステナブルな旅の情報サイト『サスタビ』を運営する鈴木さやかさんに寄稿していただきました!旅が好きだからこそ、観光が与える社会面・環境面での負荷について目を向けています。
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みなさんは、旅はお好きですか?
私は旅が大好きです!
“旅を通じて持続可能な社会をつくる。”ことを目指す『サスタビ』というWebメディアを運営し、コロナの前は国内外問わず、あちこち飛び回っていました。
ところが、このコロナ禍。人の移動を伴う旅について批判的な声も多く上がりました。それは一時的なものではなく、旅人も、旅行業界も「旅が与える現地への影響」について意識を向けるきっかけになったと思います。
そして感染拡大リスクのみならず、現地の方の暮らしを尊重することや、環境負荷を減らすことなども、旅をする人・旅を提供する人が考えるべきテーマとして浮上してきました。これは“レスポンシブル・ツーリズム”という考え方で、またそうした配慮は旅・観光を長く続ける(サステナブルであり続ける)ために必要だという認識が広がっています。
「観光公害」とは。旅することで、誰かを傷つけている…?
「サステナブル」と「旅」というワードを関連させて考えるようになったのは、留学を機にインドネシアのバリ島に住んだ経験からです。
世界的にも人気がある観光地・バリ島には、毎年多くの観光客が訪れ、島の経済は観光に支えられています。一方で、観光客が訪れることにより島の人々の暮らしや自然が脅かされている現実もあります。
たとえば、島民は1日・ひとりあたり約150Lの水しか使わないのに対し、ホテルに泊まる観光客はその15〜20倍以上の3,000L前後の水を使っています。これによりバリ島は深刻な水不足になり、島民の生活用水や農業用水が確保できなくなっているのです。
またゴミに関しても、島民が1日・ひとりあたり約500gのゴミを出すのに対して、観光客はその3倍以上の約1.7kgのゴミを排出するのだそう。(参照:NATIONAL GEOGRAPHIC/2019年)
公共のゴミ処理施設がないバリ島では、その膨大なゴミは美しい海に埋められたり、そのままゴミの山として放置されたりしています。
こうした話はバリ島にかぎったことではありません。世界全体の温室効果ガス排出量のうち8〜11%を旅行・観光業が占めると推定され、特に人気観光地などでは問題視されています。
(参照:WTTC/2021年)
私も問題に加担している。そう気づいて、サステナブルな旅を目指すように
こうした現状を知ったとき「そんなのおかしい!」と憤りを覚えると同時に「 自分もこの問題に加担している」ことに気づき、ハッとしました。
では、ひとりの旅人としてどんなことができるか、自分なりに考えてみました。
こうやって並べてみると、一見、手間がかかるように思えるかもしれません。
しかし、1つ目の「歯ブラシ」一つとっても環境に与える影響力は大きく、プラスチックでできた歯ブラシが分解されるまでには500年かかるというデータも出ています。何の気なしにホテルで1度使っただけの歯ブラシが、簡単には分解できず、気づかぬところで海に埋め立てられているかもしれません。
「わざわざ持っていくのは面倒」と思う気持ちはわかります。でも…、この事実を知ったら、手間なんてそんなに大したことないと感じませんか?何より、ホテルのアメニティよりも使い慣れた歯ブラシの方が歯もきれいに磨けますしね!
旅の恥は搔き捨て、というけれど
普段はエコバッグやマイボトルを持ち歩いていても、旅行の時は荷物になるし置いていくという人は多いと思います。
せっかく旅行に来ているんだから、日常を忘れて、特別な時間やおもてなしを楽しみたいという気持ちもわかります。
でも、旅先にいてもそれは私たちの暮らしの延長。そしてこの地球の一員であることに変わりはなく、社会や環境に対して無責任な行動をとるわけにはいきません。旅は「地球は繋がっていて、旅先にも現地の人たちの大切な暮らしがあるんだ」と実感できる機会。「旅先だから何をしてもいい」と思うよりもむしろ、「旅先だからこそ、ちょっといいことをしてみようかな」という気持ちで、できることからアクションしていけたらいいなと思っています。
旅によって私も、旅先の誰かも、地球もHAPPYになれるように。
そしてこれからもずっと旅を楽しめるように、できることを増やしていきたいです。