【スローに歩く、北欧の旅 #7】北欧式、夏の過ごし方
みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は北欧の夏休みの過ごし方についてお話します。
夏休みに向かう場所は?
北欧の国々では、仕事をする人も夏は3~4週間ほどの長い休みを取るのが一般的。その長い休みの代表的な過ごし方といえば、サマーハウス滞在です。
サマーハウス=別荘というと贅沢に思えますが、北欧人にとってのサマーハウスはもっと身近な存在。古い農家を改築して使ったり、中には自分で建ててしまう人もいます。トイレやシャワーは家の外にあったり、電気が通っていない家もあります。
もうずいぶん前になりますが、7月にスウェーデンを訪れた時に、友人がサマーハウスに誘ってくれました。
首都ストックホルムの先に広がるアーキペラゴ(群島)にあり、フェリーに乗って向かいます。これといった観光施設があるわけでもないので、島へ向かう人々はおそらく、同じようにサマーハウスを目指す人々のよう。
島についてから友人の家へと向かう途中には、サマーハウスらしき家がぽつんぽつんと建っていて、スウェーデンの伝統的な赤い壁の小屋も見えました。
お父さんが自分で建てたという友人のサマーハウスを見てびっくり。もっと簡素な小屋をイメージしていたのですが、2階建ての立派な建物でした。
よくよく聞いたらお父さんは大工さんだったそう。日当たりのよい方角には窓をたっぷりと設け、置いてある家具や生活道具は「親の代から受け継いで、長く使っているもの」と友人のお母さんが教えてくれました。
自然はみんなのもの
サマーハウス到着後は「天気がいいから!」とまずは近くの海へ泳ぎに行きました。木製の小さな桟橋にはボートやヨットがつながれ、沖を見るとボートを楽しむ人達も。
北欧というと寒い国のイメージが強いですが、夏は暑くなりますし、マリンスポーツもじつは盛んなのです。海沿いにもサマーハウスが何軒かあり、やはり海の近くの物件はとくに人気があるとのこと。
泳いだ帰り道は、島をのんびり散歩して、道端になっていたブルーベリー(ビルベリー)をつまみ食いしました。北欧では「自然享受権」とよばれる自然を楽しむ権利が保障されています。これは、たとえ誰かの所有地であっても、汚したり害を加えない限りは誰でも入ってよい権利を保障するもので、基本的にどこでも通っていいと聞き驚きました。
自生しているブルーベリーを食べたのも初めての経験でしたね。味が濃くてとってもおいしいのです。
家に戻ると、今度は友人母の手作りブルーベリーパイが登場。ライ麦の生地に生のブルーベリーをたっぷりと敷きつめて焼いた素朴なお菓子なのですが、食べる時にバニラソースをかけるのがスウェーデン流です。このブルーベリーパイはスウェーデン人にとって「おふくろの味」のようなものだとか。旬の味を食べつくすのも北欧流といえますね。
日当たりのよいテラスでコーヒーとお菓子をいただいて、ひとしきりおしゃべりを楽しんだ後は、友人は本を読み、友人母は庭の手入れをしたりとそれぞれにのんびりと過ごしました。こんなスローで静かな暮らしを数週間、過ごすのです。普段ストックホルムで暮らす友人は、夏だけでなく週末も時間があればフェリーに乗ってサマーハウスに向かうと話していました。
不便さも楽しむ
最近は夏休みに国内外を旅する人も増え、コロナ禍ではバンで旅をするのも浸透してきたようですが、やはり自然と近いサマーハウスで過ごす時間は、北欧の人々にとって夏休みの原点であることは変わらないようです。
仕事やSNSから離れ、日々泳いだり、散歩したり、読書したり、昼寝したり……とのんびり気ままな暮らしを満喫する一方で、電気や水道のない不便な暮らしをも楽しむ。そうして自然の中に身をおいて、身も心もリフレッシュさせるのです。
ちなみに北欧では主に7月が夏休みの本番。この時期は町中の小さなカフェやアンティークショップなど個人がやっているお店だと長い休みに入っていることもあるので、街歩きがお目当ての方は要注意。
私はこの後も何度か夏の北欧を旅していますが、夏はやっぱりスローな時間を満喫すべしと、すっかり北欧式で楽しむように。町中に滞在しながら海や湖にアクセスしやすいのも北欧の町のよいところです。
生活のペースを落として、不便さとも向き合う暮らしを楽しむ夏。北欧で、エコな試みが受け入れられやすい背景にはこうした夏の過ごし方にもヒントがあると思うのです。
サマーハウス近くで会った猫さん。それでは、とれーうり そっまる!(スウェーデン語で良い夏を!)
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