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【スローに歩く、北欧の旅#35】自転車の町コペンハーゲンで、実際に乗ってみた!②

みなさん、こんにちは。北欧を旅するライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。前回に続いて、コペンハーゲンで念願の自転車デビューを果たしたレポートをお届けします。今回は実際に乗ってみて苦労したポイントや、自転車で走るのにおすすめの道についてご紹介します。


自転車に乗る時のルールは?

さていよいよ初ライドです!コペンハーゲンで自転車に乗る際、必ず覚えておくべきハンドサインはこちら。
・止まる時には右手をあげる
・右折時は右手を水平に、左折時は左手を水平にあげる。

シンプルなルールですが、ハンドサインでの合図がサイクリストの間で徹底していることが事故や混乱を減らすことにつながっています。慣れない方は乗る前にサイクリストのマナーを観察して、交通量の少ない場所で練習しておくのも手です。

また自転車道を走る時は「キープライト(右側走行)」が原則で、追い抜く場合は左側から。スピードの速いサイクリスト達のじゃまにならないかと乗る前はドキドキしましたが、キープライトを守っておけば左からスイスイ抜いていってくれます。実際に乗って様子をみると、ゆっくり走っている人もいて安心しました。

そして大きめの道には自転車用の信号があります。車の信号よりも低い位置にあり、慣れれば確認しやすいです。面白いのは、赤信号から青信号に変わる際に黄色になってから青に変わること(これは車の信号も同じです)。これだと「そろそろ発進だな」と心構えができるので初心者にはありがたいんですよね。

何度かとまどったのが左折です。大きな道の場合は二段階左折(まず対面に渡ってから、左方向へ渡る)が原則なのですが、渡った先の自転車レーンにスムーズに入れなくて焦ったり、曲がった先の道幅が狭くなっていて「これは車道?自転車道?それとも対向車線!?」と迷うなど、ヒヤリとすることがありました。交通量の多い大きな交差点では自転車レーンが色分けされているので、わかりやすく助かりました。実際に乗る側になってみて、その視認性の高さを実感しましたね。

もうひとつ走っていて痛感したのが、路上駐車がないとこんなに走りやすいのか!ということ。東京で自転車に乗っていると路上駐車を避けるために車道の内側に行くべきか、それとも一旦歩道に入るべきか迷うなど、まっすぐに走り続けられないケースがいかに多いかと改めて思いました。ちなみにコペンハーゲンでは歩道を自転車で走ると高い罰金を取られます。歩道に入る場合は必ず自転車を降りて手で押して進みましょう。

自転車でぜひ訪れたい場所

右往左往しつつの初サイクリングでしたが、徒歩やバスとは辿るルートが異なり、目に入る町の景色がぜんぜん違うので新鮮でした。とくに気持ちが良かったのはコペンハーゲンの町の中心にある人口の湖に沿った道。交通量の多い橋との交差点は立体交差になっていて、ストレスなくまっすぐに走れるので初心者にも良いコースかと思います。

この人口湖の上にかかる橋のひとつで1887年に作られたドロニング(クイーンの意味)・ルイーズ橋は、毎日約4万人ものサイクリストが通過するそうです。世界的にも自転車通行量の多い橋として知られ、2022年に開催されたツール・ド・フランスのルートにも選ばれました。町の中心部へと向かう道はかつては渋滞がひどかったそうですが、現在は自動車道路を狭めて自転車レーンと歩道の幅が広げられ、歩道にはベンチが置かれてひなたぼっこを楽しむ人々も。

以前の記事(#31「世界をリードする自転車都市、コペンハーゲン②」)でご紹介した、運河沿いにできた自転車向けの橋も走ってきました。いつも下から見て憧れていた高架式の自転車専用道路スネイクを走った時は感激しましたね。アクションカメラを胸に付けて動画を撮ってきたので、ぜひご覧ください。

実際に走ってみてよくわかったのですが、スネイクは足元まで細い欄干を使ったシンプルな構造なので、視界をそれほど遮らずに景色が楽しめるんです。

運河沿いでは、私が利用していたのと同じドンキーリパブリックをはじめ、シェアバイクに乗っている人もよく見かけました。運河沿いに建つ美しい建築や、運河プールなど観光スポットを気軽に行き来できるのも自転車ならではですね。

快適さと爽快さにすっかり癖になりそうな、コペンハーゲンのサイクリング観光。何よりコペンハーゲンの町で自転車に乗れた!というのは自信にもなりました。観光局がおすすめする自転車で走りやすいエリアをマップでチェックしたり、自転車ならどこが行きやすいか、どこに行けるかと考えるのも楽しいもの。町散策の楽しさがぐっと広がりました!

自転車の乗り方を学ぶ場所

コペンハーゲンっ子はいつから、どうやって立派な自転車乗りになるのだろう?とつねづね思っていたのですが、子どもが自転車のルールを学べる交通公園なるものがあると知りました。サッカー場やスケートパークなどを併設し、メーデーには大きな集会も開かれるフェレ公園の中にある交通公園では信号や道路標識など、実際の道路と同じものが子ども向けに小さいサイズで設置されていて、自転車の乗り方から交差点の渡り方など交通ルールを学ぶことができます。2歳〜8歳の身長130センチ以下の子どもは無料で自転車とヘルメットを借りることができ、公園のスタッフは自転車の乗り方だけでなく、自転車の選び方や修理についてもアドバイスをしてくれるそう。ガソリンスタンドの模型もあって、セルフサービスでのガソリンの入れ方も学べるようです。

アマーという地域に暮らす友人宅を訪れた時に偶然、通りかかったのが自転車ライブラリー。さまざまなサイズの子ども向け自転車が揃っていて、会員になると自転車を借りて敷地内で乗り方や交通ルールを学ぶことができるのだそう。フェレ公園に比べると小さなスペースですが、信号機や交通標識もあり、小さな子どものために三輪車もあります。ここは地域に暮らす有志たちの働きかけで生まれた場所で、現在は市の許可を得て常設の自転車ライブラリーとして運営されています。こうした試みも、世界をリードする自転車の町を支えているんですね。

コペンハーゲン名物といえば、荷台付きの三輪自転車クリスチャニアバイク(#30「世界をリードする自転車都市、コペンハーゲン①」参照)。ちょうど出くわしたクリスチャニアバイクの荷台には子ども用の自転車が2台、乗っていました。これから家族でサイクリングを楽しみに行くのでしょうか。そういえば電動のクリスチャニアバイクも町中でよく見かけるようになりました。大きな荷物や子ども達も乗せて走るクリスチャニアバイクは、やはり電動だと心強そうですね。

サイクリングを楽しんだ帰り道に出会ったのは、人懐っこい猫のチャーリー君(滞在先のご近所さんの飼い猫です)。自転車に乗っていると道にいる猫さんに気づく余裕はなかったので、ここでたっぷりと猫補給をさせてもらいました。それではヴィシース(デンマーク語でまたね)!

プロフィール  森 百合子(もり ゆりこ) 

北欧5カ国で取材を重ね、ライフスタイルや旅情報を中心に執筆。主な著書に『3日でまわる北欧』(トゥーヴァージンズ)、『北欧ゆるとりっぷ』(主婦の友社)、『いろはに北欧』(学研プラス/地球の歩き方)など。執筆活動に加えてNHK『世界はほしいモノにあふれてる』『趣味どきっ!』などメディア出演や、講演など幅広い活動を通じて北欧の魅力を伝えている。築88年の日本家屋に暮らし、北欧デザインを取り入れたリノベーションや暮らしのアイデアも実践中。 
HP:https://hokuobook.com
Instagram:@allgodschillun

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