【スローに歩く、北欧の旅#2】プロお断り!?の蚤の市
みなさん、こんにちは。ライターの森百合子です。カボニューにつながる、北欧での体験を紹介するこの連載。今回は北欧の蚤の市についてご紹介します。
暮らしの道具は蚤の市で見つける
北欧に行ったら、まず真っ先に駆けつけたい場所……それは蚤の市です。ビンテージ食器や家具が好きな方にとっては、旅先の蚤の市は外せないスポットですよね。北欧では、ちょうど今くらいの季節から10月くらいまでは屋外での蚤の市が盛り上がるシーズンで、週末ごとにあちこちで開催されています。規模はさまざまで、プロのディーラーも出店して名作ビンテージがずらりと揃うような会場もあれば、地元の人しか知らないような小さな蚤の市もあります。コロナ禍で、大規模な蚤の市はしばらく中止となっていたようですが、だんだんと復活している話も聞きます。
北欧の国々では蚤の市が生活に浸透しています。親もとを離れて新生活を始める時、新居を持った時など、真っ先にのぞいて必要なものを揃えるという人は少なくありません。家具や食器などインテリア関連はもちろん、洋服や本、子ども用品、絵画などさまざまなものが出品されていて玉石混淆。それを掘り出していくのがまた楽しい。
北欧といえば幸福度調査で常に上位にランキングされ、福祉も充実した国として知られますが、もともと天然資源は乏しく自然も厳しいため、20世紀初頭まではヨーロッパでも貧しい国だったんですよね。そうした背景があるため、資源を有効活用できるよう長く使える物づくりが求められ、一方で簡単に物を捨てない暮らしが根づいたと言われます。日本のもったいない文化とも通じるところがありますし、蚤の市が彼らの生活に密着しているのは必然とも思えます。
開催方式もさまざま
夏が盛況とはいえ、中には一年を通じて開催している蚤の市もあり、屋内型もあるんです。冬の北極圏を旅した時に、さすがに蚤の市はないかしら……と思っていたら、体育館のような建物が常設の蚤の市会場となっていました。館内は小さなブースに仕切られていて、委託販売のような仕組みで会計は共通のレジで行われています。通常の蚤の市のように各ブースに出店者がいないので、買う時のやりとりがないのは残念ですが、蚤の市好きには嬉しい仕組みです。
北欧各国でさまざまな蚤の市をのぞいてきましたが、とくに面白かったのがストックホルムで訪れた会場。「1km ロッピス(ロッピスとはスウェーデン語で蚤の市の意味)」と呼ばれ、会場となる1kmほどの区域に暮らす人しか出店できないという地元民しばりの蚤の市なんです。プロの出店を禁じ、純粋に不用品をリサイクルしようという目的のために、こうした開催形式となったのだとか。
いわゆる名品に巡り合う機会は少ないですが、普通の家庭で使われていたリネンやキッチン道具などを見てまわるのは、リアルな生活をのぞき見るようで面白いですし、なにしろ不用品の処分が目的ですから、とにかく安い。時折、嬉しい掘り出しものも見つかります。
地元の人同士で小さくなった子ども服の売り買いをしていたり、子ども達自身が服やおもちゃを出店していることも。子どもの頃から自分に必要なものを見極めて、不必要になったら捨てるのではなく、他の誰か必要な人に譲ることを学べるのもいいですよね。
こうした地元密着型の蚤の市は、他の町でも開催されていました。不用品を売るだけでなくシナモンロールなどお手製の菓子や飲みものを販売していることもありますし、地域のお祭りにおじゃましているよう。その日だけ開放されている中庭をのぞけたのも貴重な体験になりました。それにしても自分の家の前で開催なら出店もしやすいですし、うちの近所でもこういう蚤の市ができたらいいのになあと思いました。
1km ロッピスで手に入れたもの。おじいわんの最後の日々を描いた絵本と、イラストがだいぶはげているフィンランド、アラビア製のカップ、リネンのテーブルクロス。どれも確か10クローネ(約130円)。おじいわんの絵本の中面を見ると、図書館のスタンプがありました。返却しないで売っちゃったの?と一瞬焦りましたが、どうやら廃棄本のよう。貸し出しスタンプがたくさんついていて、スウェーデンの図書館で長く読まれていた本がめぐりめぐって、日本のわが家にやってくるとは感慨深いです。泣けるんですよね、このおじいわん絵本……(スウェーデン語はたいして読めないのですが、絵だけで泣けます)。
それでは ヴィ セース!(スウェーデン語で「またね」です)
蚤の市でご近所をパトロールしていた猫さん。ふっさふさです。
連載タイトルの「猫でテーブルを拭く」とは、「やり方はいくらでもある」「意外なところに道はある」といった意味のフィンランドのことわざから一部を引用しています。(『フィンランドの不思議なことわざ』草思社 参照)
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