見出し画像

圧倒的な「おいしい花」体験!「エディブルガーデン」小澤亮さんが伝える自然や生産者への想い

たとえば、ひと口飲むだけでバラの香りがカラダじゅうに満ちるカクテル。イタリアの食後酒にヒントを得て作られた、まるで花束のようなタルトーー。圧倒的なインパクトで、現実を忘れるほどの食体験がいま注目されています。

食べられるにもかかわらず、これまでは飾りとして使われることが多かった「食用花=エディブルフラワー」。そのイメージをガラリと変え、おいしく味わえるように取り組んでいるブランドがあるんです。それが、エディブルフラワー専門店『(エディブルガーデン)』。

画像1

取り扱っている食用花はすべて化学農薬不使用。通常栽培の約3840倍もの香り成分をもつ、最高品質の食用バラ「YOKOTA ROSE」をはじめ、生花・押し花タイプの食用花など30種類以上のラインナップを取りそろえます! 美しい彩りだけでなく鮮度の高さや香りの豊かさも人気の理由。カフェや洋菓子店など、国内外の星付きレストランでも愛用されています。


安全で地球にも優しい。無農薬のエディブルフラワー

「エディブルフラワー」は花屋さんなどに並んでいる観賞用の花とは異なり、毒がなく、食用として安全に栽培された花のこと。一般的には、野菜と同じ農薬基準で栽培している生産者が多いそうです。

では、化学農薬を使わずにエディブルフラワーを育てるのは難しいことなのでしょうか。そんな疑問に答えてくれたのは、ブランドを運営する株式会社.science代表・小澤亮さんです。

【プロフィール】dot science株式会社 代表・小澤亮さん
2017年9月「良いものをつくる生産者を応援するため」に、.science Inc.を創業。同時に100%化学農薬不使用のエディブルフラワー専門店EDIBLE GARDENを公開。2022年3月には「おいしい花体験」を創作するE.F.Lab(エディブルフラワー研究所)を公開。花本来の価値と可能性を最大限に引き出すことができるクリエイターと共に、花食ならではの未体験の味覚づくりに取り組んでいる。

「本来、花は香りで虫を呼び寄せるものなので、野菜よりも虫がつきやすいんですね。農薬を使えば手間は軽減されますが、花びらの構造上、残留農薬が残ってしまう場合があります。無農薬ならそのリスクがゼロになるだけでなく、水で洗わずに食べることも可能です。また、化学農薬は石油燃料由来。有機農法は土壌のCO2の吸収量が多いという研究結果もあるそうで、この選択肢は環境配慮にもつながると考えています」

エディブルガーデンでは、自然栽培や有機農法、およびLEDを使った植物工場で育てている生産者と契約。植物工場では障がい者福祉施設の方々が栽培・収穫をしている生産拠点もあるそう。各栽培方法ごとにその苦労は異なりますが、収穫までは雑草を手で抜いたり、害虫対策にテントウムシやクモを放ったり。発送時も虫の混入を防ぐために細心の注意を払い、4回にわたる目視チェックをおこなっていることもあるのだとか。

生産者の想いと、商品価値を正しく伝えたい

画像2

「でも、こうした生産者さんたちの努力が一般のお客さままでなかなか伝わっていないのが現状です」と小澤さん。

小澤さんが代表を務める「.science」は、マーケティング・料理・科学の視点から食の課題解決に取り組む専門家集団。IT企業出身でマーケターとして活躍する代表・小澤さんと料理人の田村浩二さん、農業科学者の木村龍典さんがタッグを組み、分析や商品開発、流通・販売といった広い視点から生産者を支えています。フレンチの技法で干物をアップデートした『アタラシイヒモノ』や、伝統技法を用いた『THE OMOCHI』などのブランドも運営。

「生産者さんの中でも若い世代を中心に、SDGsへの意識をもつ人が増えている」と言います。

「中にはASC認証(持続可能な養殖水産に関する国際認証制度)を取得した漁師さんがいて、審査や設備投資などで数百万円以上かかる取り組みなので、そこに先駆けて参入するのはすごいなと思いました。しかし、お金をかけて認証を取ったところで、評価してくれる人がどれだけいるのだろう、と」

「このような、生産者の環境に対する努力や食材の品質向上に対する努力はもっと報われてほしい。だからこそ僕たちは、商品価値を正しく見える化し、わかりやすく伝えることに尽力しようと、昨年“食品の見えない価値を可視化する”事業『成分分析ブランディング』をスタートさせました。より良いものを作ろうと頑張っている、生産者さんたちの未来を支えたいです」

使命感だけでは続かない。『おいしい』をきっかけに環境問題を身近に

生産者の努力や価値を食べ手に伝える――。ここで「すばらしい取り組み」として小澤さんが挙げたのが、東京・神宮前にあるフレンチレストラン『シンシアブルー』。ASCなどの国際認証を取った漁師や、捨てられてしまう未利用魚などをメイン食材としたサスティナブルシーフードに特化したレストランです。料理を通じて海の未来を考えることができるお店です。

「僕もプライベートでよく行くのですが、未利用魚ってこんなにおいしいのかといつも驚きます。魚の鮮度を保つため仲買人さんが“神経締め”という方法で未利用魚を締めているのですが、そこにシェフの調理技術が加わると、捨てられてしまう魚が感動的なおいしさに生まれ変わります!ここではおいしい料理を入口にして、水産資源の問題に向き合うことができます」

「どんなにいいおこないでも使命感だけでは続かないですよね。近年では『環境への配慮』という文脈で、若い生産者さんの挑戦を料理で応援するシェフも増え、それが食べ手の方々まで伝わる流れができてきています。こうした素敵な活動がもっと盛り上がってきたらいいなと思いますね」と話します。

△「エディブルガーデン」がプロデュースする食用花「AYUMI」の栽培風景。障がい者福祉施設の方々が栽培・収穫をしている拠点も。

花をおいしく食べることが当たり前の未来を目指して

画像3

エディブルガーデンも、生産者の方々と一緒に「香りがある花」や「食べておいしい花」を新たに栽培するチャレンジを行っています。2021年には世界初となる、通年出荷できる食用バラ「Nobel Rose」の開発に成功。本来は冬の収穫が難しいバラですが、クリスマスやバレンタインの時期でも楽しめるようになりました。

画像4

また、2022年春からは一般のお客さんに向け、新しい花食(かしょく)体験を提供する「エディブルフラワー研究所」もスタート。その一環で、ミクソロジーカクテルの第一人者・南雲主于三(なぐも しゅうぞう)さんとコラボレーション。日本を代表するバーテンダーが手掛けたのは、7種類以上のバラの花びらを液体窒素で固めて砕き、ウォッカに香りを移したローズスピリッツです。

画像5

そのローズスピリッツをベースにして、ペルー産アマゾンカカオを使ったローズのマティーニや、バラとシャンパンのカクテルなどを創作しています。凝縮したバラの香りに「飲み終わった後も身体の中から香りが上がってくるほど」なのだとか。

さらには、美しい花の色合いをそのまま生かした花のクッキーやチョコレート、温かい紅茶に浮かべると花が浮かぶ「花咲く砂糖」など。さまざまなジャンルで活躍する食のクリエイターとコラボし、お店で、催事で、通販で、花をおいしく食べる体験を準備しているそうです。

画像6

目指すのは、日頃から花を楽しむ『花食(かしょく)』への道筋づくり。

「今、花を食べる機会はあまりないですし、食べてもおいしいと思うことはそれほどないかもしれません。だからこそ、これからは花を食べる機会を増やし、花への意識や価値観をアップデートしたい。ワクワクするほどおいしいエディブルフラワーを日ごろから楽しんでもらえば、今後もカルチャーとして根付くはず。みなさんの『花のおいしい体験』を増やしていきたいですね」

見て楽しい、食べておいしい花食文化。これからは、人にも地球にも優しい無農薬のエディブルフラワーを何気なく食べる日々がやってくるかもしれません。

*  *  * 

「アースデイ東京2022@代々木公園」に出展します
2022年4⽉16⽇(⼟)・17⽇(⽇)

2022年3月11日(金)〜5月30日(月)に開催される『アースデイ東京2022』。
カボニューは、4⽉16⽇(⼟)・17⽇(⽇)に代々木公園に出展します。
ブース内で、インタビューにお答えいただいた小澤亮さん監修の体験コーナーをお楽しみいただけます。

■小澤さんより体験コーナー提供へのコメント

「アースデイ東京2022では、ティークリエイター志水優子さんと『花のお茶』を提供します。使用する花は、農薬不使用栽培であったり、障がい者の作業工賃の向上に貢献できるようなストーリーも含まれています。それでいて、美しくもおいしいとっておきのお茶ができました。ぜひ足をお運びください」

写真提供:EDIBLE GARDEN
取材・執筆:田窪綾



おすすめのマガジンはこちら👇


この記事が参加している募集