古材や古道具をレスキュー。“カルチャー”を広げる「リビルディングセンタージャパン」の原点
長野県諏訪市に拠点を構え、リビセンの愛称で親しまれる「ReBuilding Center JAPAN」。
リビセンの活動のベースにあるのは”レスキュー”。古い建物から古材や古物を回収することを、リビセンではそう呼んでいます。
前編では、古材や古道具がどう生まれ変わるのか、リビセンのDIYカルチャーをお伝えしました。
後編は「ReBuilding Center JAPAN」を運営する東野華南子さんのインタビュー。リビセンが生まれたきっかけや、大切にしている価値観について伺いました。
レスキューの基準は「次の世代にもつなげたいものかどうか」
リビセンを運営しているのは、空間デザインユニット「medicala」として活動していた東野唯史さん、華南子さんご夫妻。
日本各地を転々としながら空間をつくる暮らしをする中で、空き家や古い建物の解体現場に出会い、「捨てられてしまうものを、どうにかして救えないか」と考えるようになったのだそう。
――華南子さん
”レスキュー”という言葉は、この『救う』という発想から生まれたんです。
次の使い手に受け渡すところまでがレスキュー。もったいないからとレスキューしても、良さを伝えられなければ結局ごみになってしまうので、『自分たちが使い方を提案できるか』という軸は、ひとつ持つようにしています。
…なんて言いつつ、家主さんの思い出話を聞いているうちに心動かされて、レスキューするはずじゃなかったものをレスキューしてきちゃった…なんてこともあるんですけどね(笑)。
レスキューの数だけ、ストーリーがある
古材や古道具って、一つひとつ個性が違うし、ストーリーがあるんですよね。何に出会えるか分からない、そんな偶発的な出会いも、古材や古道具ならではの魅力だと思っています。
日本の各地方では、過疎化などが原因で解体せざるを得なかった家屋がたくさんある。手放す寂しさとか後ろめたさとか…そういう気持ちも一緒にレスキューできたらいいなと思っています。
レスキューの数だけ想いがある。「どんな場所でどんな人に使われてきたのか」を、一つずつ丁寧に綴ったプロダクトストーリーは、まさにその思いを具現化したものです。レスキューしたものには番号が振られていて、どこでレスキューされたものかがわかるようにしています。
アメリカのポートランド発祥のReBulding Center
東野さん夫婦がリビセンを作るきっかけとなったのは、2015年に新婚旅行で訪れたアメリカ・ポートランドのReBulding Center。そこはDIYの聖地とも言われる巨大なリサイクル資材ショップ。
――華南子さん
そこでカップルがアイス食べながらドアノブ選んでるのを見かけて、その光景がとても新鮮だったんです。あと80歳くらいのおばあさんが、古い柱を担いで颯爽と歩いていたりした姿も衝撃で。
日本でそんなシチュエーションを見ることって、なかなかないじゃないですか(笑)。なんかかっこいいなって思ったんですよね。
捨てられたり壊れたりしたものを直して再度使うことが、それだけ当たり前で日常なんだと感じました。すごく驚いたのと同時に感動したことを今でも覚えています。
日本でも同じものをつくりたい。そう決めてから約半年で「ReBuilding Center JAPAN」をオープンしました。
暮らしは自分でつくれる。その心強さを伝えたい
私はデザインも建築も全く勉強したことなかったし、ものが何からできているかなんて考えたこともなかったんです。
肉じゃがは肉じゃがだし、机は机でしょ?って感じで。それくらい知らなかった。家の壁が石膏なのか土なのか、何でできているのかすら考えたことがなかったんです。
でも自分で見て触れることをしてみたら、だんだん分かってくるようになって。どうやら世の中は因数分解できるらしいってことに気づいたんです。
リビセンの活動を通して、暮らしは自分でつくれるってことの心強さを、伝えられたらいいなと思っています。リビセンでDIYクラスを始めたのも、そういった想いからです。
道具が変わると、暮らしが変わる
今、みなさんの身のまわりには、何が見えますか?
座っている机と椅子。ノートに本棚。コーヒーを飲んだマグカップ。それらが何でできているかなんて、考えたこともない人が多いと思います。
でも、だからこそ、ちょっと立ち止まって「どんな素材でできているんだろう」と考えてみると、ものを見たり選ぶ視点が変わるかもしれません。
――華南子さん
サステナブルって大事なマインドだってことは分かるけど、環境にいいことをしようと意識しすぎるのも疲れちゃう。
手に取ったものがたまたま環境によかった、そんな喜びがたくさん仕掛けられたらいいなと思っています。
あとシンプルだけどマイボトルはとっても便利!私は常に2本も持ち歩いてます(笑)。ペットボトルだと買ってもカバンに入れっぱなしなことが多くて。でもマイボトルだと『お気に入りの飲み物を自分で入れて持ち歩いている』という意識を持てるから、自然と水分補給をするようになって、飲み残すことも減りましたね。お気に入りのマイボトルなら気分も上がりますしね。
***
道具ひとつで、暮らしは変わる。そう実感したという華南子さん。
身のまわりのものに目を向けて「これは何でできているんだろう」と想像してみること、そして「自分にフィットした道具を見つけること」環境アクションのきっかけをもらった気がしました。